夜歩くのもいい伊吹山「美濃」

1996年 8月 10日(土)〜 8月 11日(日)

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低山徘徊日記
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 ドライブウエイが頂上まで付いているので、なんだか嫌だな・・・なんて理屈 を付けて敬遠していた伊吹山ですが、とある方のホームページを見て、出かけて きました。 実をいうと、30年近く前に、一度、会社の仲間と出かけた記憶が あるのですが、どんな山だったのか・・・きれいさっぱりと忘れてしまっていた ので、行ったら何か思い出すかしらん・・・という気持ちもあったのです。


   会社から帰って来たのが20時少し前、慌ただしく夕食をすませ、20時34 分のバスで出発。近鉄・JRと乗り継いで米原で下車、向かいホームの大垣行き の電車に乗り換える。22時30分頃近江長岡駅に到着。ぞろぞろと駅前に出て 来た登山者は30人くらいか・・・50分に来たバスはほぼ満席。10分ほどで 登山口の上野に到着。

 バスを降りる。向かう先には伊吹山の輪郭がおぼろげに見え、中腹にはリフト の明かりらしい白い光の筋が見える。・・・、ここでは、まだ何の記憶も蘇らな い。取り敢えず、みんなの後について歩きはじめる。上野の集落のメーンストリ ートを歩いて行く。こんな夜更けに山に登ろうとしている・・・地元の人達から 見るとおかしな人間に見えているんだろうな・・・などと、話しながら歩く。突 当たり左手に神社の境内へ登る階段がある。よう判らんけど、上がってみる。こ の辺りで一服して体勢を整えるパーティが多く、そこから先は道を探しながら行 くことになる。神社の右手に林道風の割と広い道があったので、そちらへ行って みる。他に行く人もいないので、しばらく誰か来るのを待ってみる。男性3人の パーティが来て登り始めたので、その後について歩く。林道を少し行くと、右手 に一合目へのリフト駅がある。その先の階段道から登山道が始まる。

 この辺りでヘッドランプを取出す。ヘッドランプ装着の為か、立止まった3人 組みを抜いて登りはじめる。道は概ね車の通るほどの幅があるが、所々には石の ゴロゴロしたところもあり、ヘッドランプの明かりだけでは、何処を歩いたらい いのかよく判らない。ヘッドランプの明りで見える範囲で最適なルートを探しな がら歩く。見通しのきかない曲がりくねった道を登る。途中、数人の人を見掛け たが、あまり人影はない。やがて、リフトの一合目駅の下手で林道に出てくる。 すぐ上が一合目の休憩所になっていて、自動販売機の明りが付いている。数十人 の人が賑やかに休憩中。団体が多いようでなかなか賑やかだ。

 一合目は通過することにして広いスキー場のなかを進む。数件のスキー宿のよ うな建物もあり、その前に大きな白い犬がいる。ロープに繋がれているのだろう が、どこに繋いであるのかよく判らない。少しビビリながら右に大きく巻いて通 る。一合目から上に行くリフトの駅を右に見て、広い草原の道を登る。暗くては っきり見えないのだが、車の轍のような踏跡が幾筋もあり、どれが歩きやすいの かよく判らない。適当に歩く。草原に出てからは、適当な涼風もあってとても歩 きやすい。炎天下では倍ほどシンドイだろう。坂の上には次の休憩ポイントの自 動販売機の明りが見えている。単調な登り道を辿ると、右手の自動販売機の前で 沢山の人が休憩している。芝生の隅っこに座り込んで小休止。振り返ると下界の 灯が美しい。大都会ではないので100万ドルとはいかないが、広い範囲に明り がきらめき、意外なほどだ。

 二合目を出ると草原の広い道から右手の山道に入る。分岐に小さい登山道表示 があったが、暗いこともあって、他の人がそちらに向かわなかったら見逃してい たと思う。すぐに分岐があるが、どちらに行ってもすぐ同じところに出るようだ。 先行者に続いて右をとる。少し登ると見晴らしのよい中腹の道に出る。先行のパ ーティも思わず立止まってしばし夜景を楽しむ。二合目で見た時よりも、さらに 展望は広がる。高速道路のオレンジ色のライトが幾筋もの光の帯となって見える。 帰省ラッシュで相当渋滞しているようだ。山腹を伝う風が心地好い。

 さらに登っていく。夜でしかも風もあるのに、相変わらずひどい汗だ。風はま すます強くなってくる。頭の汗が飛沫となって顔や手に降り懸かる。一瞬、小雨 が降って来たかと勘違いする。風でお腹のあたりが急速に冷えてくる。肩から下 げたカメケースで腹部を庇うように歩く。やがて、分岐があり左に登山道の表示 がある。帰りに判ったことだが、ここも、どちらでも大差はない。左へいくと三 合目の「伊吹高原ホテル」の前へ出るだけだ。

この辺りが、白山でいえば"室堂"のような感じのところか・・・一帯は広い丘陵 になっており、正面には伊吹山の本峰が、その全容を現す。まだ、遠い・・・と 感じるとともに、先行する登山者のヘッドランプの明りがチラチラと見えたりし て、意外にすぐ近いような気もする。そんな光景を見ながら高原ホテルの前のベ ンチで休憩。なんとも、休憩が多いが、急いでも仕方が無い。早く着いても、頂 上で日の出を待つ時間が長くなるだけだ (^_-)  休憩していると、強い風に飛 ばされて時折小雨が落ちてくる。あれっ、そんなに悪い天気ではなかったはずだ が・・・風が強いこともあったので、予防の意味で雨具の上だけ着る。

 高原ホテルの正面のスロープを少し下り、なだらかな坂を四合目へ向かう。道 端をヘッドランプで照らすと白い花が浮かび上がる。帰りの花探訪に期待が膨ら む。緩やかな坂を登りきったところに展望台風の建物(リフト駅)があり、ここが 四合目のようだ。ここから右の山道に入る。ジグザグの登りが続く。所々で、上 の方を見通せるところもあるのだが、どうせ2時間くらいはかかるので、あんま り上を気にしても仕方が無い。ヘッドランプの差し照らす足元を見つめてひたす ら歩く。上の方から先行する若者達の声が風に乗って届いてくる。

 ゆっくりと一歩一歩を踏みしめるように歩く。ほとんど疲れた感じはしない。 一歩踏出すごとに少し痺れるような快感がある。この夏の北アルプスでの歩きと 同じような感覚だ。九合目付近まで一気に登る。頂上直下は岩を削ったようなゴ ツゴツとしたところがあって、ヘッドランプではルートがとりにくいところがあ ったが、とにかく上を目指す。月明りの取れる夜であれば、マシなんだが・・・

 傾斜が緩くなって、小屋の並ぶ広い場所に出る。ここらで小休止をいれよう・ ・・と小屋の階段に腰を下ろして芳子を待つ。近くには、もう寝ようとしている 人達もいる。少し先の方には自動販売機もあり、人も沢山いる気配がする。「頂 上まで行かずに、こんなところで寝るんだったっけ・・・」古い記憶を辿るが、 何も思い出せない。やがて、芳子も到着。「もう、九合目は過ぎたわよっ」「え っ、そんなら、ここが頂上・・・?」九合目の標識を見落としていたので、てっ きり、ここが八合目か九合目かと思っていた。「なあ〜んだ、ここが頂上か」

 奥の茶店の方へ行ってみると、沢山の登山者が小屋の壁などに凭れかかるよう に休憩中。中にはシュラフ入っている人もいる。私達も階段に寝場所を構える。 そうこうしていると、急にガスが出て来る。続々と登山者が到着する。最終的に は100人以上の人がいたのではないだろうか・・・かなりの賑わいだ。汗に濡 れたシャツを着替え、雨具まで着込んで夜明けを待つ。それでも風が吹くと少し 寒い。少しウトウトとした程度しか眠れなかったが、4時半頃になると次第に明 るくなって起き出すことにする。依然、ガスは晴れない。

 御来光は望めない・・・失望したパーティは続々と下山していく。展望は全く 望めないものの、頂上の広場に出て朝食。雨は降っていないのだが、髪の毛が濡 れて水滴が出来、慌ててフードを被る。弁当のおにぎりを食べた後、お花畑を散 策。ルリトラノオやなんとかフウロ、コオニユリなどが咲き乱れている。流石に 草花の豊富さは評判通りだ。イブキの名前を冠したものや、ここにしか無い種も 多いといわれるが、あまり珍しいものを探しあてること出来なかった。それでも、 十分堪能させてもらう。濃い霧の中にヤマウドの白い影が幻想的。その中に赤い ユリの花がそれだけは自ら光りを放っているかように鮮やかに浮かんで見える。

"カメラマン"も多く、撮影ポイントには巨大三脚がズラリと並ぶ。頂上直下ま でドライブウエイが入っているので大きなレンズや三脚を持った人も多い。

 家内は寝不足でちょっとシンドそう。写真を適当に切り上げて、下山すること にする。登りには全く見ることの出来なかったが、登山道の両脇にも草花が多い。 時折足を止めて、写真を撮りながらゆっくり下りる。登りに気付かなかった道の 様子が判ってくる。登っていて時折バランスを崩しそうになったりした訳も判っ てくる。登山道にはゴロゴロとした岩も多く、ヘッドランブでは全体が平面的に 見え、段差なんかが的確に判らないのだ。

 往路に気が付かなかった三合目付近のお花畑の中を通りロッジの前で休憩。振 り返って見る伊吹山は、幾分晴れて来たものの、頂上付近はまだガスに覆われて いる。

 スキー場への道を下る。山に登って同じルートを下りるのは、本来好きではな いのだが、夜に通った時とは見えるものが全然違うので、全く新しい感動がある。 同じルートを通っても苦にならない。この辺りは、ムラサキツメクサが多い。カ ワラナデシコもある。1枚残ったフィルムに何を納めようか・・・と思案しなが ら下りる。

 登山口バス停に到着。汗に濡れたシャツを着替え、少しきつくなってきた日差 しを避けて日陰に入ってバスを待つ。帰りのバスも、満席に少し足らないほどの 人数で、ゆったり座って近江長岡駅へ。11時20分の米原行きの電車に乗継ぎ 帰途につく。


 帰りのバスに乗り込むとき、チラっと見た伊吹山はガスも切れはじめ、ちょっ とだけ頂上が顔を覗かせてくれていました。30年前の山の記憶は何も取り戻せ なかったけど、素晴らしい花の山を新たに記憶することが出来ました。

1996年 8月 10日(土)〜 8月 11日(日)   (メンバー)芳子  

 1996年  8月 10日(土曜日)曇り
 
        23:00          220.0m  伊吹山登山口                                    
        23:30          420.0m  一合目                                          
        23:45- 23:55           二合目                                          

 1996年  8月 11日(日曜日)曇り

         0:20-  0:30   770.0m  三合目                                          
         0:55          880.0m  五合目                                          
         1:55         1220.0m  八合目                                          
         2:15-  7:30  1377.1m  伊吹山                                          
         9:30-  9:20   770.0m  三合目                                          
        10:15- 10:57   220.0m  伊吹山登山口                                    

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