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小川隆章さんの「屈斜路湖の近くのオプタテシュケ(雄武達山、雄武建山)

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「屈斜路湖の近くの眺望の素晴らしい藪山・オプタテシュケ(雄武達山、雄武建山)」

 北海道東部の屈斜路湖の南部の湖畔の集落・コタンの東方向に位置する標高504mの低山である。国土地理院の5万分の1の地形図、および2万5千分の1の地形図には山の名称が記載されていないが、地質図にオプタテシュケという山名が記されていた。近くの林道の名称が[雄武達山林道]となっている。また弟子屈森林管理署の地図では「雄武建山」と記載されている。雄武達山と雄武建山というのはいずれもアイヌ語の名称に漢字を当てたものであろう。この山に関心を持って、昨年10月、11月、12月と、3回登ってみた。

第1回(平成14年10月25日)
 コタンの集落から山に向かって農道を乗用車で接近していくと、牧草地に至り、道は終わっていた。この日は五万分の1の地形図のみ持参していた。牧草地の道の終点に農耕用車両が来た場合に邪魔にならないように駐車して、牧草地を進むと、西側に湖面がわずかに見えていた。牧草地の端から雑木林に入ると、色々な種類の草や蔓・茨が茂り、歩き難い。あいにく磁石を持参していなかったので、湖も山頂も見えず、うっかりすると方向を誤るのではないかと気がかりにもなる。

 かなりの距離を進んだ気がしたが、後で地図で確認すると、直線距離で500m程度東に歩いたとき、思いがけず南北に走る林道に出た。進路と林道が直角に交差したのである。この林道は南方向にわずかに勾配が高いので、南に歩く。しかし、少し行くと、やや下り勾配になって来た。依然として樹木のため、山頂は見えなが、緩い勾配を下って行くのは山頂から遠ざかってしまうのだろうと判断して、林道の東の樹林へと入ってみた。針葉樹と広葉樹が混じった樹林を勾配の高い方へと進むと、赤いテープを付けた木を見つけた。以前にこの山に登った人が帰路を見失わないように付けたものか。7,8メートル先に次のテープを付けた木が有る。山頂へ導いてくれそうなテープに勇気づけられてしばらく進むと、意外にもテープの導く進路は明らかに斜面を下り始めているのに気づく。がっかりしたが、また意外にも進路が林道に交わった。

 こんどの林道は東方向に登っている。先ほどの林道よりも道にデコボコが多く、普通の乗用車では乗り入れが困難だが、車高の高い四輪駆動車なら通れるかも知れない。後で2万5千分の1の地形図を見ると、この林道が記載されていた。この道を500m程進む。出発してから約1時間経過し、合計1キロ半ほど歩いたことになる。

 林道の勾配が平坦になり、目ざす山の位置が見えて来た。林道の右側の斜面は草を刈られて、針葉樹の苗を植林したことがわかった。草刈りした部分は登りやすい。この造林帯は200mほどで終わり、1mほどの笹が生い茂った急斜面になると、俄然歩きにくくなる。振り返ると湖面の広がりが雄大に見えて来た。勾配が急な斜面は笹だけでなく、点々とダケカンバやハンノキ、ナナカマド、マユミなどの広葉樹が生えている。一部の木は大きな倒木となって行く手を遮るかのように姿を横たえている。茂った笹の下に年月を経た倒木が隠れている。気がつかないで足を取られて前のめりに倒れてしまいそうだ。もっと怖いのは倒木の枝が上を向いて尖った槍先のように鋭い凶器になりかねないことである。このような長く伸びた笹をかき分けて進むのは骨が折れるが、背後の湖面と和琴半島、中島、美幌峠から津別峠へ続く屈斜路カルデラの外輪山脈などを眺め、休み休み進む。登るに従い、湖面が拡大して行くのがわかる。

 山頂部は平坦な笹原になっている。斜面よりも笹が短く、歩き易い。笹原の中に1平方メートルほどの突起が目立つ。山頂標識はなく、標石が埋められているのみである。出発から約2時間かかった。山頂および山頂部の笹原からの眺望は素晴らしいものだ。屈斜路湖の奥に藻琴山が大きく裾を広げて雄大に横たわり、冠雪した斜里岳、その左手前に川湯の硫黄山(アトサヌプリ)、マクワンチサップ、サワンチサップが並んでいる。東方向にはするどく尖った摩周岳の山頂部とその右隣になだらかな西別岳の稜線が見える。南方向にはビラオ山が目立ち、その左側は釧路方面へ続く平野が広がっている。雄阿寒岳は山並みの向こうに、釧路市から見るような台形でなく、富士山型の頭を出している。標高わずか504mの低山としては恵まれすぎているような展望の山であり、藪漕ぎの苦労が十分報いられるといえる。

 この山の360度の眺望の主役はやはり屈斜路湖と藻琴山であろう。山頂部の笹原を藻琴山の方向に歩き、藻琴山を眺めながら下山することにした。登って来た東側斜面と同様に北西の斜面も笹が茂り、見え隠れする倒木も多かった。下山時はすでに状況がわかっていたので、出発地点の車までの所要時闇は1時間15分程度であった。

第2回(平成14年11月17日)
 この時は2万5千分の1の地形図を持ち、車も4輪駆動車にして、前回出会った林道を行けるところまで車で入ってみることにした。弟子屈町の国道243号線が屈斜路湖の南端に近づき、主要道道52号線「屈斜路摩周湖畔線」と分岐する地点より約1キロ半手前を右に入ると釧路川にかかる「美登里橋」を渡る。この道を美留和方面に1300mほど行くと、左に入る林道の入口がある。「雄武達山林道」という標識が出ている。ここを入り、約500mほど先で「池湯林道」への分岐を右に見て、さらに1400mほど進むと、まっすぐそのまま北に伸びる林道から右(東方向)に分岐する林道が有るので、ここで右の林道へ進む。

 前述のように、この林道はデコボコが激しくなってくるので、無理をして進むと帰れなくなる恐れがある。新たな倒木が道を塞ぐところでは車を降りて片付けなければならない。分岐から700mほど登り平坦な道になって来たあたりで、道の脇に駐車できそうな箇所を見つけて他の車が来た場合に邪魔にならないように駐車する。車から離れて林道を100mも歩く間もなく、前回入っていった造林帯へ着き、そこの斜面を南方向へと草が刈られた斜面を登る。今回は車を出発点として約1時間ほどで山頂へ到着した。前回同様素晴らしい眺望であった。

第3回(平成14年12月1日)
 今回の調査の目的の第1は積雪期のこの山の状況の把握であり、第2に山行中に携帯電話が使えるかどうかをチェックすることであった。前述の雄武達山林道の入口に行くと、なんと、除雪してある様子だ。行けるところまで行くつもりで車で入ると、前回駐車した付近まで行くことになった。除雪していない場合は林道入口より1時間半から2時間ほど歩くことになる。前回と同じ地点からスノーシューを装着して造林帯を南方向に登り、今回も湖が見えて来るあたりから笹の斜面を頂上に向けて東方向へと登る。

 斜面の急な箇所も有ったので、アイゼンを携帯していたが、今回は一度も使用することなく、スノーシューのまま急斜面をジグザクに登って行った。天気が良く、風が無く、登りでは雪の上に転倒することも無かった。斜面の所々に大きな岩が露出していた。いずれも樹木が絡まり、まさにしっかり鎮座している様子なので、落石となる恐れは無さそうだ。積雪は20cm程度で、まだ雪崩の恐れはなさそうだった。登りの雪の斜面に所々に野性動物の足跡がみられた。雪面はスノーシューで踏むと10〜20cmほどめり込むところが多いが、雪面が固くてスノーシューの足跡が薄くできるだけの箇所も有った。後者は積もった雪が風で移動して集まった所なのであろう。

 今回は林道から出発して1時間40分程で山頂に着いた。正午頃であった。今まで風がほとんど無かったが、山頂の有る笹原の突起に登ると冷たい風を感じた。前回から1ケ月も経過していなかったが、見渡す限りの雪景色となり、すっかり印象が違って見えた。(林道からは携帯電話はつながらないが、中腹および山頂からはつながった) 


この山の12月撮影の全景


        

10月に写した中腹から屈斜路湖の南部



12月撮影 の山頂から湖面と藻琴山


小川隆章
papa88@beige.plala.or.jp


[以下、あきゆき記]

 やっぱり、雪の山はいいですねぇ・・・
今年は冷夏で、北海道ではもう初雪もあったようですが、本格的な雪も早いかもしれませんね。
ところで、残暑きびしい関西で、これらのお写真を拝見すると
心持ち、涼しくなります (^_-)


ご投稿、有難うございました。
今後とも、宜しくお願いします。






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