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坂元さんの「北岳遭難救助報告」   9/5〜6 北岳遭難での目撃情報の提供を呼びかけましたが、   不明者は9/6夕刻発見され最悪のケースを免れることができました。   ご協力、有難うございました。   この救出にいたるまでの経緯をまとめられた坂元さんからのレポートを   この場に転載、ご報告させていただきます。      これは、ご協力をいただいた皆様への経過及び結末のご報告であるとともに   私たちが、山でいつ見舞われるかわからない状況への参考にしていただく   為のものです。   不明者および報告していただいた坂元さんへのご意見やご感想などは   ご遠慮ください。   あくまでも、ご自身の参考に留めていただくようお願いいたします。                              (あきゆき)  【おことわり】     本報告は9/8未明に書かれたもので、事故の最終報告として     まとめられたものではありません。


救助のために現地に行っていた、職場から派遣した医師から
昨日9月7日の16:00時無事、病院に収容されたとの報告を受けました

状態としては、頬骨と尾骨の骨折、胸椎の圧迫によると思われる変形
下肢の浮腫、筋肉の過度の酷使などによる肝機能異常、
飢餓状態による血清電解質の異常が認められ
さらに山中で熊に襲われたため腕や顔に外傷を
負っているとのことです

本人の弁では、白根御池小屋から北岳頂上を越えて、9月2日に
北岳山荘に宿泊したが、
頭痛やめまいなどのため夜も殆んど寝られなかったようです
(おそらく、高山病にかかっていたと思われる)

9月3日早朝、山荘付近は、みぞれ/強雨と濃霧に包まれており
頭痛と疲労感が非常に強かったが、9月4日は重要な会議があるので
あえて下山に踏み切ったとのこと

天候が悪かったので、八本歯ノコルからの下山はやめて、
再度頂上を越えて白根御池小屋を経由し広河原目指して帰路についた

しかし、濃霧の中、ハット気が付くと何時のまにか下り道に入ってしまい
木製の梯子や鎖がある急な、岩場に下りてしまっていた
(本人によると、どこだかわからないが、
地形から多分八本歯ノコル付近と思われる)

その岩場を少し真っ直ぐ進んだあたりで、めまいのためふらつき
右手の崖下(つまり池山吊尾根の南斜面)に数十メートル転落
(恐らく八本歯沢?付近)

這い上がろうと思ったが、疲労と打撲した痛みでパニック状態になり
そのまま、闇雲に斜面や沢筋を下ってしまった
(おそらく、池山吊尾根の南斜面の原生林に迷い込んだと思われる)

その後は、原生林の中を滝や崖にぶつかりながら、行きつ戻りつ
無我夢中で、登ったり下ったりしながら、3晩4日さ迷い続けたとのこと

この迷走の最中に、合計6回も熊と遭遇し、
追いかけられて逃げ回っているうちに、
谷や沢に何度か転落したとのこと

しかし、1回は熊に襲い掛かられ、必死でステッキを振り回し
大声をあげて防戦するうちに、熊が逃げていったとのこと

夜間は、熊に襲われる恐怖、寒さ、雨などから、あまり眠れず、
昼間、安全な場所を選んで、1〜2時間まどろむ程度であったとのこと
食料の手持ちはまったくなく、草や葉っぱなどをかじって飢えをしのいだ
沢水が見つかるまでは、葉っぱの上の水滴を舐めていたようである

9月6日の夕方、沢沿いにある小さな小屋(山梨県企業庁北沢宿泊所)を
見つけるもすでに意識が朦朧としており、寝込んでしまう
(場所は、野呂川発電所から荒川沿いにさらに奥へ3時間入った北沢付近)

偶然に、月2回の日帰りの取水口巡視を請け負っている
定年退職した山梨県企業庁の嘱託職員が、17:00頃、
昏倒している遭難者を発見

この9月6日は運がよいことに、
定期の巡視日ではなく、この職員のオフであり
たまたま趣味の写真撮影のため、北沢の上流に上がっており
いつもの巡視のくせで何気なく帰りにぶらりと小屋に寄って
昏倒している遭難者を発見したとのこと

この人は、この遭難者を急いで小屋に入れて、
風呂を沸すなどして身体を温めるよう努めた

それとともに、小屋にある非常回線を使って警察に
一報を入れる(18:20分)

この救助者は持っていた自分の昼の弁当の
残りのいなり寿司を遭難者に食べさせ、
遭難者の状態から一緒に下山は不可能と判断、
日帰りの予定を返上して遭難者と一緒に
小屋に宿泊を決意

小屋に収容後も、恐怖と極度の疲労で錯乱状態に陥りがちの
遭難者を励まし、慰めながら一晩、小屋で添い寝をし、
気分を落ち着かせるよう努める

翌朝、8:45分、職場からの救助搬送隊7名が現場到着
野呂川発電所から奥の荒川は、道らしい道がなく、沢筋を歩くので、
救助隊員は、交互に抱えながら、沢筋を5時間かかって林道まで搬送する

野呂川発電所付近で待機していた、奥さんが大声をあげて
泣きながら遭難者に飛びつく
職場から派遣した医師が、診察した上で、病院に搬送する

遭難の顛末は大体以上のようですが、この人は北岳が初めてで
場所と名前が一致しないので、何処をどのように歩き回ったのかは
よく分からないようですが、人が滅多に入らない
池山吊尾根の南斜面の原生林に迷い込んだのは確実で
所持品として、食料も防寒用服もライトもなく、薄い雨合羽一枚で

警察によるとまさに奇跡的な生還であったとのことです


[以下、あきゆき記]

ご報告、有難うございます。
>天候が悪かったので、八本歯ノコルからの下山はやめて、
>再度頂上を越えて白根御池小屋を経由し広河原目指して帰路についた

正解だと思います。
しかし、それでも迷ってしまった・・・すぐに分岐がありましたから
あのあたりで迷い込んでしまったのでしょうか? 山の怖さですね。
そして滑落・熊との遭遇・・・

この辺りの低山であれば、下っていけばなんとかなりそうな気も
しますが、それとて、滝上や崖上に出て身動きできなくなるので
タブーとされています・・・それが、あの北岳で・・・(@_@;)

ともあれ、奇跡的な生還でした。沢山の運の悪さもあったと
思いますが、それ以上の幸運があったのでしょう。
巡視員が偶然発見してくれるなんて、幸運中の幸運。感謝あるのみ。

妙なところに感激してしまいました。
ただ、相当衰弱されていらっしゃるようですので、早いご回復を
お祈りいたします。

そして『最後まで諦めちゃダメ』。これが大きな教訓だと思いました。


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【参考】当初の情報提供依頼(当ページに記載したもの)
                   2001.09.05〜06掲載
 (不明者のお名前は伏せることにします:あきゆき)
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求む、北岳遭難情報

行方不明者 ○○○○○(○○○○○、59歳)
体格的特長 中肉中背

服装,白い綿もしくは、ブルーのジャージのズボンのどちらか
リック, 赤いリックサック
帽子,グリーンの登山帽子
雨具、ブルー(紺色に近い)の雨カッパ

9月3日、当日の情報として、○○氏が北岳山荘を出発した30分後に
山荘の2名従業員が
八本歯のコルから大樺沢経由で下山しているのですが、途中で○○氏のような
人を追い抜いてはいないとの情報が入りました

本日の捜索は、大樺沢上流部と池山吊尾根を中心に探すようです

みなさん、よろしくお願いいたします

捜索本部 小笠原警察署 地域課 ○○○−○○○−○○○○

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○○氏は、9月1日から北岳に単独で入って、帰宅予定時間の
9月3日の夜を過ぎても、下山しておりません

9月1日には白根御池小屋、9月2日には北岳山荘に宿泊し、
その北岳山荘から18:00頃に「予定通り明日(9月3日)夜帰宅する」
との電話を自宅の奥さんに入れております

9月3日早朝に北岳山荘を出立したことまでは確認済みですが
どの方向に向かったかは誰も見た者はいないそうです

この9月3日は、山荘周辺は時々みぞれ混じりの雪・濃霧の
悪天候であったそうです

もし、この9月3日に北岳山荘に宿泊した方か、この日にこの付近にいて
何らかの情報をお持ちの方をご存知でしたらお知らせください

八本歯のコルから大樺沢に下りた可能性が高いのですが、
濃霧のためボーコン沢の頭の方に迷い込んだことも考えられます


『低山徘徊派! (^^)v』及び『ML低徘』へのご意見、ご感想はあきゆき(akiyuki@teihai.com)までお願いします。(黒江彰之)
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