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酒井 浩司さんの「道東遠征・斜里岳」報告 酒井 浩司さんへのお便りは (sakai@kcn.or.jp) へどうぞ

<斜里岳(上二俣−熊見峠間)の黄葉 >

斜里岳【山岳】
9月22日:6時30分〜16時45分
場所;斜里岳
同伴;陽子
装備;OLIMPUS L-1,ESPIO 928
参考文献;中高年の山65(山と渓谷社),
Operation;Keen Edge 97			Code;山頂耐久戦
行動背景;今朝も雨が残っているが、登山の機会は今日限りだ。嫁の強い希望で
          登山口まで行き、天候の回復を待つことになった。天気予報は午後か
          らの回復を告げているので、10時までに回復すれば登ることにする。
行動目的;日本百名山を完登すること。この天気では目的は定めようがないので
          何をしても構わないが、霧による熊出没の可能性を考慮し明るいうち
          (午後4時)に下山すること。

8:00,青岳荘を後にする。20分ほど前に登山道には着いたのだが、運悪く観光
バスから大集団が下車、登山口に消えて行くところだったので、暫く間を置くこ
とにしたのだ。現時点で、天候回復の可能性は低く見切りをつけた。

下二俣までの簡単な渡渉で早くも流れに足を落とす。資料通り河原の石は滑らな
いのだが、増水しているので飛び石ルートがひどく限られる。羅臼の疲れも残っ
ているようだ。エスケープルートもアップダウンが激しく疲労が重なる。コース
は一旦左岸にはずれるが、ここも滑りやすい急登で注意が必要。

いくつ目かの滝で先行する大集団(30人程度か)に追いつく。集団は4〜50m
に伸びており、足場の悪いこの道で追い越すのは難しい。早すぎる休憩をとり時
間調整を行う。いつしか雨は上がり、雨の心配は薄れるが、自分たちのペースで
登れないのが辛い。

10:00頃,見晴の滝直上に立つ。何気なく振り返り息をのむ。雲の切れ目から網
走〜オホーツク海が望めたのだ。嫁も感動しきりの様子。強行して良かったなぁ。
なお、この辺りの黄葉は鮮やかで羅臼より早めのようす。

10:20,上二俣着。途中に一枚岩を斜めに横切る鎖場等、危なっかしいところが
多々ある。「河原の石は滑らない」というのは下流の話で、上流では苔が生えて
いて滑るのだ。流れがなくなり、傾斜が緩やかになったところが上二俣。ここで
休憩中の大集団と再び遭遇。見覚えのある顔に双方同時に記憶が蘇る、「昨日、
羅臼で会いませんでしたっけ?」。山頂から羅臼平に降りる途中、すれ違った大
集団の方々だった。

後から思えばここで彼らを追い越せば良かったのだが、空腹に負けて昼食を摂る
事にした。いまは雲はなく複数の頂が見えるが、どれが目指す山なのか解らない。
上二俣には結構広い平地があるので休憩場所に適している。平地の奥と手前の2
カ所に踏み跡があるが、奥はいま来た沢ルートへ降りていく道である(分岐には
気付かなかった)。
ガイドには二俣〜上二俣間は50分と書かれているが、あるグループは「1時間
半もかかったよ〜」と言いつつ登ってきた。我らも1時間40分かかっている。ひ
たすら登るだけなら50分でも良かろうが、景観を楽しむために、1時間チョイ
はみた方が良い。
食事が終わるころ、雲の流れがオホーツク側から太平洋側からに変わる。周囲の
山は白濁の中に再び消えた。鳥居を越えて黄葉の小道を進む。難所「胸突き八丁」
を軽く突破。我々に軽く突破される難所も珍しい(笑)。

11:40,馬の背着。NHK教育「中高年の登山岳」ではここからがきついと言っ
ていた筈だ、気を引き締めよう。右手が断崖のような(霧で見えない)ところを
通り、崩れそうな祠を通過すると山頂だ。
しかし何も見えない。先行した集団の会話が聞こえてくる、「あら〜、何も見え
なくなっちゃったね〜」。もう少し早く上がってきていればなぁ。休憩の場所と
タイミングを間違えたようだ。
このまま引き返す気になれず、ガイドブックから下山に用する時間を逆算、明る
いうちに清岳荘に着くには13:00の下山開始が必須と判断。天気予報の「午後から
回復」に期待をつなぎ、あと1時間は山頂に留まることにする。一旦南西斜面に
退避、風を避けてコーヒーを作るが、動きを止めた体はまったく温まらない。
30分経過、状況変わらず。後から何人も登ってきたが、みな早々に立ち去った。
40分経過、一瞬雲が消えオホーツク海が見える。しかし、カメラを出す間もな
く視界は閉ざされる。
最後に上がってきた登山者も今し方下山していった。待機も徒労に終わるか…。

12:45,不意に南東の雲が切れる。南斜里岳から遠く阿寒岳までが目に入る。続
いて海側の視界が開け、360度の大パノラマが。カメラを構えて、私は右回り
に、嫁は左回りに回転し、歓声をあげながらシャッターを切る。誰かが見ていた
らけったいなカップルに見えただろう(笑)。

13:00,タイムリミットだ。羅臼岳山頂が雲に隠れたままで名残惜しいが下山に
移る。胸突き八丁で最後に登ってきた夫婦が休憩をしており「雲は晴れましたか?」
と尋ねてくる。山頂からの眺めを楽しみたいのは誰も同じようだ。特に(多分)
二度とこれないような山では。
上二俣を過ぎると龍神の池への道が右に降りていく。透明な水を湛えた美しい湖
のようだが、時間いっぱい山頂に留まったのでもう行けない。黄葉が湖面に映え
て美しいだろうに残念だ。熊見峠まではアップダウンの少ない尾根沿いの道で、
斜里山系の黄葉、麓の平原、屈斜路湖など、景観を楽しみながらの歩行が続く。

14:35,熊見峠着。しかし、ここからが今日の最難関だった。ガイドにはここか
ら下二股の記述はないが、この間の傾斜は並ではない。急降下どころか急落下と
言うべきものだ。しかも、斜里の山頂を踏んだ登山者の大半がこの道を降りたの
だ。水の浮く泥道は荒れ、泥が擦り付けられた岩は滑りやすく、膝に一層負担が
かかる。山頂での感動も吹き飛んだ。周辺に生える木にぶら下がり、慎重に降下
する。沢の水音が聞こえ出し、見覚えのある二股看板を見たときには「ああ、生
きて帰れたんだ」と思った。膝痛による立ち往生も考えられたのだ。登高時と比
べて明らかに水量の減った渓流を軽く渡渉し、清岳荘に戻ったのはリミットを10
分越えた16:10であった。

コース記録;清岳荘(8:00)→二股(8:40)→上二股(10:20)【昼食】(11:10)→馬の
背(11:40)→斜里岳山頂(12:00)【待機】(13:05)→馬の背(13:35)→上二股(13:50)
→熊見峠(14:35) →二股(15:25)→清岳荘(16:10)

編集後緑;山頂耐久戦; 山行では単純に景観に感動したいのだが、今日はめま
ぐるしく変わる天気に翻弄された。しかし、山頂からの景観は寒さに1時間耐え
ただけのことはあった。
初めての地で黄葉時期の見極めに苦労した(斜里のHPにお世話になった)が、
ドンぴしゃのタイミングだったと思う。再び来る可能性が低い山で旬を楽しめた
のは幸いである。
それにしても昨日は速度戦、今日は耐久戦か。もう少し落ち着いた山行を楽しみ
たい…。


『低山徘徊派! (^^)v』及び『ML低徘』へのご意見、ご感想はあきゆき(akiyuki@teihai.com)までお願いします。(黒江彰之)
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