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高橋一雄さんの「那須の山歩き」 高橋さんは、11月は富士の見える山に行かれるそうです。  さて、どこに行かれるのでしょうね (^_-) 高橋一雄さんへのお便りは (CZP03712@sniftyserve.or.jp) へどうぞ



「三斗小屋温泉と那須の山歩き」
 那須連峰の西側に三斗小屋温泉という登山のベースというか中継点というかひ
なびた2軒の温泉宿がある。山登りには昔から人気のあるところで、偶然のこと
だが、私がそこの1軒を予約した次の日、作家の立松和平氏が「会津中街道なん
とか」というTV番組の取材のために訪問していた。那須連峰はそのうちの1つ
や2つを登るだけなら首都圏から日帰りもできるのだが、いかにもあわただしい
し。はじめて那須の山歩きをするにあたってこの温泉宿にとまり1泊2日の計画
とした。そのうちの1軒、大黒屋に予約を入れたのだが、山小屋と違ってこの予
約をするというのがいつも急に思い立って出発する私にはわずらわしい。前日は
雪も降ったので足ごしらえと防寒具をというのが宿のアドバイスであった。

 10月21日(月)、JR大宮駅から普通列車に乗り、終点の黒磯駅に着いた
のが9時53分。少々待って那須ロープウエイ行きのバスに乗る。月曜にも関わ
らず満員。山登りの服装をしているのは数人であとは観光客である。レストラン、
土産物屋、ペンション案内などがやたらにある実とを1時間あまり走って終点。
降り立つとロープウエイ乗車口は延々長蛇の列。お目当ての茶臼岳までは歩いて
も1時間半程度なのだがあまり歩こうとする人はいない。

 まず峰の茶屋めざして登る。非常に歩きにくい石の階段である。きのうの雪が
まだ少し残っている。左手に見える茶臼岳の斜面ははだれ雪。1時間ほどで峰の
茶屋。といっても昔、茶屋があった跡でいまはベンチ代わりの板と手頃な石があ
るだけ。それでも見晴らしのいい場所なので大勢のひとが休んだりお昼を食べた
りしている、私も昼食をとる。ここから西に降りていくと三斗小屋温泉に1時間
ほどで着く。それではあまり早すぎるので、今日は朝日岳に登ってから行く。朝
日岳は那須連峰のなかでひときわ目立つ岩山。岩稜地帯を登っていく。何カ所か
鎖場もあるが危険な個所はない。それでもきのうの雪ですべりやすいところがあ
り、慎重に足を運ぶ。峰の茶屋から1時間あまりで朝日岳頂上。「続・展望の山
旅」にも紹介されているだけあって、ここからの眺めはすばらしい。南北につら
なる那須連峰はもちろん、奥日光、尾瀬の山々、さらには利根川源流の山々が午
後の光の中に浮かび上がっている。もっともいい条件のときなら富士山も見える
らしいが今日はだめ。男体山、女峰山、日光白根山、太郎山、燧岳など山座同定
を楽しみ、写真を撮り、三斗小屋に向かう。三本槍岳へ向かう主稜線と分かれて、
熊見曽根、隠居倉へとたどる。茶臼岳、朝日岳、三本槍岳と那須の主峰と終わり
に近づいた紅葉山腹を眺めながらのこのコースは気分がいい。しかしコースの最
後、小屋への下りは雪解けのどろどろ道で難渋した。源泉がふつふつと沸くとこ
ろや温泉神社の前を通って三斗小屋温泉大黒屋旅館につく。

 到着は3時半。さっそく部屋に案内され、すぐ湯にはいる。大きな湯船でいい
湯加減。ガラス戸越しにダケカンバの林や遠くの山々を眺めながら疲れをいやす。
食事は各部屋に持ってくるとのこと。相部屋でないのはありがたいが、食事は同
宿者と一緒のほうがいい。暗い灯りの(自家発電)部屋でひとりぽつねんと飯を
食うのはわびしい。何人かのグループで来ているのならともかく、1人、2人で
きている客は一緒に食事をしてもらったほうがいいと思う。若い外国人が一人、
さびしそうにこたつに入っていた。たぶん、同宿者と交流したかったのではなか
ろうか。宿の主のもてなしの心次第でもっと楽しい山の宿になると思うのだが…。
山間の秘湯というので人気があるのだが、それにもう一つ心配りがほしい。

 きのう雪がふったというだけあってもう寒い。なのに掛け布団1枚だけで毛布
も出さない。まだ準備ができていないという。アルコールの力を借り、あるもの
をみんな着て寝た。夜中に小用で目が覚めたら、もう寒くて眠れなくなり、その
まま朝を迎えた。とりあえず風呂に入って体を温め、朝食をすませ、テルモスに
お茶をもらってそそくさと出発する。今日は樹林の道を大峠に向かい、そこから
三本槍岳へ登り、中の大倉尾根を北温泉にたどるロングコースである。大峠への
道はブナやミズナラの生い茂る道で、3本の沢を渉り、笹の道を少し登ると大峠
に着いた。10数人のグループがいましもこの峠を出発し、三本槍岳へ登ってい
った。峠からは秋晴れのもと、会津の山々、吾妻山系、そしてはるかに真っ白に
なった飯豊連峰が望まれた。峠の地蔵さんにお賽銭をあげ出発。登りがけっこう
きついのと眺めがいいのとで、しょっちゅう足をとめては息を入れ写真を撮る。
峠から2時間、三本槍岳頂上に着いた。槍とあるが鋭鋒ではない。昔、会津、那
須、黒羽の3藩が国境確認のため、槍を立てたことに由来する山名である。広い
頂上には20人ほどが展望を楽しみ、あるいは昼食をとっていた。ここからの眺
望はきのうの朝日岳からのそれに勝るとも劣らない。峠から見えた山々がせりあ
がってきた。昼食をすませ、いつまでたっても飽きない眺めに去りがたい思いで
立ち上がる。主稜線とわかれ、一軒宿の北温泉へ向かう長い中の大倉尾根のコー
スである。東南へ向かうえぐられたような道は雪が融けて泥濘と化し、難渋する。
展望の開けたコースだが、足元に気を取られなかなかゆとりがない。両側にダケ
カンバが多くなると歩きやすくなり、ブナ、ミズナラと気持ちのいい樹林のなか
のプロムナードがつづく。ヤマモミジ、ハウチワカエデ、オオカメノキなどの紅
葉の中を来た温泉にたどりついたのは2時50分。先着したグループは湯につか
る用意をしている。私も一風呂の誘惑に駆られたが、温泉につかればビールを飲
むのは必然!となるのそのあとのバス停までのだらだらの登り道(約20分)が
つらくなる。ここはじっと我慢して、帰りの電車の中で今回の山歩きをかみしめ
ながらビールを飲むことにしようと、ザックを背負いなおした。バス停で待つこ
と20分。今日は空いているバスに50分ゆられ、黒磯駅。ここでビールと弁当
を買い込み、がらがらの上野行き列車のに乗り込み、帰宅の途に着いたのは4時
35分であった。


『低山徘徊派! (^^)v』及び『ML低徘』へのご意見、ご感想はあきゆき(akiyuki@teihai.com)までお願いします。(黒江彰之)
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