新雪の大普賢を行く「大峰」

1995年 11月 26日(日曜日)

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低山徘徊日記
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 予定を少し遅れて5時50分に出発。天気予報では問題なかったので、全然心
配していなかったのだが、意外に雲が多い。朝はこんなものだろうかと思いなが
ら、R169をひた走る。予定の7時少し前に和佐又ヒュッテの前に到着。ヒュ
ッテ前のテン場には、流石にこの時期、一張りのみ。ただ、駐車している車はか
なり沢山だ。

 身仕度を整えてPLUTO車を待つ。PLUTO車は渋滞の為、少し遅れての到着となる。
おっ、平熊さんも乗っている・・・(^^)v 参加の危ぶまれていた平熊さんだが、
車の中にその顔を発見。

 ヒュッテをスタートして、和佐又山の北側斜面に沿って「和佐又のコル」へ向
かっていくと、思いの外、雪が多いのに気がつく。日陰の処だけに、解けるのが
遅いのかなあ・・・と思いながら、鞍部に到着。ここで、無双洞へのルートを左
に分け、日本岳方向への尾根道となる。尾根道になると殆ど雪は無く、ブナの林
の中の緩い坂を快適に登る。日本岳南面の岩壁に近づいたところで左へのトラバ
ース道となる。鉄梯子を登って、尚も、水平道を進むと「笙の窟」に到着。一休
みにする。
  
  窟の前で休憩していると、崖の上の方からツララが落ちてきて、近くの岩に当
り四方に砕け散る。慌てて窟の奥に場所を移す。ここからは梯子も多いし、雪も
凍っているかも知れない。男性2人のパーティが上がって来たのを機に出発。
「ゆっくり慎重に・・・」と、お互いに声を掛け合う。雪は数センチで、そんな
に深くはないが、鉄梯子や岩の上に一部凍結があって気をつかう。他の方はベテ
ランなのでスイスイと歩いているようだが、家内は雪が嫌い・・・ということも
あって、どうしても遅くなる。まあ、安全第一ということで、マイペースでの歩
行を心掛ける。
  
  石の鼻で、小休止。小普賢岳の右奥に見える大普賢岳の頂上付近は霧氷で白く
なっている。ここから小普賢の肩までは鉄梯子が多い。注意深く進む。肩から急
な坂を下りる。少し雪が付いているが凍ってはいない。アイゼンの踏み跡もある
が、凍結は部分的なので却って歩き難いような気もした。

 下山者のグループとすれ違う。男性リーダーと女性5〜6人。6時半にスター
トして大普賢岳のピストンだとのことだった。この他にも何人かとすれ違ったと
思うが、日曜日にしては山行者の少ない季節になってきた。
  
  わかたさんの遭難現場で小休止。ここで、今日の最大の目的であるお地蔵さん
の安置作業にかかる。 PLUTOさんが中心になって有志の方の浄財を募って建立さ
れたお地蔵さんだ。こういうことの是非についてはいろいろ意見の別れるところ
だろう。私も PLUTOさんの気持ちに賛同し、また、この地で、ここ数年遭難事故
が相次いでいることもあって、安全登山を祈念してお地蔵さんを担ぎあげるお手
伝いをさせていたたくことになったのだ。わかたさんの遭難現場に程近い木の根
の角にお地蔵さんを据え付ける。ささやかに供養の真似事をし、登山の安全を祈
願する。
  
  ホッと一息付いていると先程の男性2人が上がっていく。私達も後を追うよう
に頂上を目指す。夏に来たときにはオオヤマレンゲの咲いていた縦走路手前の道
では、今日は霧氷のカケラがキラキラと舞い落ちている。空気はヒンヤリして汗
かきの私にとっては、これくらいの冷たさが心地好い。頂上直下で、下山してく
る男性2人と交叉。最後に霧氷のトンネルを潜るようにして頂上に到達。

 朝方多かった雲も晴れて、今は快晴に近い。北東方向の高見山から右周りに、
明神平・大台ケ原・南の太平洋まで続く大峰の山々・釈迦ケ岳・八剣山・弥山・
行者還岳・七曜岳・バリゴヤの頭・稲村ケ岳・山上ケ岳と360度の大展望だ。
北側斜面を吹き上がってくる風音は凄まじかったが、頂上では風はさほど強くは
なく、日が当たってポカポカと心地好い。昼食を済ませて下山する。

 PLUTOさんと平熊さんには先に行ってもらい、家内とゆっくり下りる。下りは登
り以上に慎重を期すが、家内はへっぴり腰になってしまい、これでは余計危ない。
シャンと立った方が安定がいいよ・・・というのだが、すぐ腰が引けてしまう。
まあ、場数を踏まないとなかなか巧くいかないようだ。

 わかたさんの遭難現場まで来ると、 PLUTOさんと平熊さんは谷底へ下りる準備
をしている。白いザイルを木の根に括っている。これは平熊さんの「護身用」の
ロープらしいが、あまり使ってないというので、 PLUTOさんも恐る恐る、体重を
かけないように下りていく。 PLUTOさんに続いて平熊さんが下る。彼等がワンピ
ッチ下りた頃、中年のご夫婦が登ってくる。「どうしたんですか?」ザイルの先
を覗き込む。「ああ、一寸肝だめしに下りてるんですよ(笑) ・・・実は、・・
・」このご夫婦、6本爪のアイゼンを付けていたが、この付近では雪は無かった
ので、岩の上を歩くとガリガリ音を立てて爪がチビっていく。少し上の広いとこ
ろで、アイゼンを外していたようだ。

 谷に下りた2人は、1時間程かかるということだったので、私達は先に途中ま
で下りることにさせてもらう。おかげで時間はたっぷりある。ゆっくり下りるこ
とができる。小普賢岳の肩のところから、彼等が下りている谷に向かって「おお
ぅいぃ」と数回読んでみる。一つ向こうの沢なので声が届かないのか、応答はな
い。石の鼻まで下りて一休みする。ここも朝よりもした後、笙の窟まで下りて彼
等を待つ。

 この時間になっても、まだ、時折ツララが落ちてくる。岩に当たって砕ける音
がパァーンと小気味がいい。時間が経つと寒くなってくる。日の当る処へ出て待
つことにする。30分ほどすると、ガサゴソ足音がしたので「えらい、早いなあ
・・・」と、よく見てみると、単独の男性が下山してくる。朝、私の車の向い側
に駐車して、先に登っていった人だ。そう言えば、その後、姿を見なかったが、
尋ねてみると、無双洞から七曜岳・大普賢岳とまわってきたそうだ。榛原の人で
奥駈に4回も行っているそうだ。本場のアルプスにも行っているらしい。「おた
くら、行かれました?」と聞かれたが「いえいえ、私等は、せいぜいこの辺り迄
で、生駒山が専門です・・・(^^;」と答えるのが精一杯。「山も中毒になります
なあ・・・」という言葉には、納得。この方の行かれたコースは私達が、以前廻
ったことのあるコースの逆周りだったが、これも良さそうだ。来年にでも行って
みたいと思う。この人、八剣山から富士山を見たことがある・・・とも言っては
ったが・・・ほんまかいな・・・

 1時間たっても、2人は下りてこない。「こんな時無線が役に立つのじゃない
の・・・」家内が皮肉を言う。確かにナア・・・今日に限って2人とも忘れてた
・・・

 遅いなあ・・・これは迎えに行ってみなければ・・・と思って、日本岳のコル
の下まで様子を見に戻る。まさかとは思うのだが、少し心配になってくる。尚も
待っていると、ようやく2人の姿が見える。「おぅ〜い」声を掛けると、今度は
口笛で返事があった。

 彼等の汗がひいたところで出発。ここからは余り険しい道ではないが一ヶ所だ
け鉄梯子がある。その鉄梯子を下りる。「ホッとして気を抜くと危ないヨ・・・」
家内に注意したとたん、先に行っていた PLUTOさんが転倒して尻餅・・・一瞬、
梯子から落ちたのかと思いギクッとする。「ホラ、気をつけないと・・・」

 和佐又のコルへの静かな森の道は、木の根が張って滑りやすい。平熊さんが大
きくバランスを崩し、あわや・・・という感じだったが、かろうじて右手を付い
て尻餅を避ける。尻餅をつかなければセーフ・・・というのが我が家のルールだ。
その直後、今度は私が大きくバランスを崩す。辛うじてセーフだったが、後ろで
家内の笑う声が聞こえる。

 和佐又のコルを過ぎ、枯れススキの広がるスキー場へ戻ってくる。「なんとか
無事に下山できてよかったネ」「ヒュッテ前に下りる最後のスロープ・・・ここ
で、ホッとして、よく滑るんだよね」「そう言えば、前に来たときに滑ったわ・
・・」なんて、話していたら PLUTOさんの身体が大きく崩れた・・・アハハ

 去年の秋に来たときに、落ちた実を拾った大きなトチの木も、今年は遅すぎて、
今は丸裸になっている。ヒュッテの中に入るとストーブが焚かれている。おやじ
さんも冬仕度に忙しいようだ。暫くの休憩の後、PLUTOさんの車に続いて和佐又
ヒュッテを後にする。

1995年 11月 26日(日曜日) 晴    (メンバー)PLUTOさん、平熊さん、芳子

         7:55-  8:35  1160.0m  和佐又ヒュッテ                    
         9:15-  9:25           笙の窟                                          
         9:40-  9:50           石の鼻                                      
        11:15- 12:00  1779.9m  大普賢岳                                     
        13:25- 14:45           笙の窟                                          
        15:15- 16:00  1160.0m  和佐又ヒュッテ                                  

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