晩秋の野坂山地を歩く

1995年 11月 12日(日曜日)

TOP MENU
低山徘徊日記
山域INDEX
LAST PAGE



リンドウ


(C)1995 Akiyuki Kuroe   All rights reserved.


 野坂山地というのは、琵琶湖の北西岸の滋賀と福井県境の山地で、その最高峰の
三国山でさえ900m足らずの低山です。奈良からですとなかなか不便で、バスの
時刻の関係で電車では日帰り不可能と思っていました。車で行くことも考えていた
のですが、自宅から近鉄の西大寺駅まで歩くことで可能だと判り、早速電車で出掛
けてみました。


 少し寝過ごしたこともあって、慌てて家を出る。まだ、薄暗い。バスに乗れば
10分程の距離だが、歩くと遠く感じる。歩いている間に明るさが刻々と変わる。

 途中の比良辺り迄は、雲も少なかったのだが、流石に北陸に近づくにつれて、ど
んよりとした鉛色の空になってくる。今朝方まで降っていたのだろうか。車窓から
見る道は、まだ雨の跡が残っている。お天気は快方に向かっているようなので、期
待出来るかも・・・

 予定の電車とバスを乗り継いで、9時に北マキノのバス停に下り立つ。登山姿は
私達の他に単独の男性が一人。早速に登山口へ向かって歩き始める。やがて、道は
スキー場の中を通るようになると、わざと道をそれて草原の中を歩く。少しだけだ
が、コスモスが咲いている。キャンプでもしていたのだろうか、学生のグループの
姿が見える。スキーシーズンには賑わうのだろうが、今は静かなたたずまいのゲレ
ンデだ。そこかしこに、食堂等の店があるが、閉鎖中だ。

 同じバスに乗っていた単独男性は、地元の近江今津の人で、登山口からは登らず、
そのまま林道を登って行った。いろいろルートを知っているのだろう。彼によると、
もう、この秋、この辺りも一度は雪が少し積もったそうだ。

 登山口からは、いきなり、尾根に取付く階段道の登りで、一気に高度を稼ぐ。単
調な階段道から尾根筋の変化に富んだ登りになるとホッと一息つく。ふと、目の前
に紫の花が2輪。まだ蕾なのか、開いてはいないが、リンドウだ。エゾリンドウか
も知れない。早速、写真を撮る。折角なので三脚を出してしっかり撮る。

 やがて、尾根筋の木立の切れ間から、時折、「明王ノ禿」が見えたりするように
なり、途中の一寸した広場、「武奈ノ木平」に出てくる。立ったまま一寸休憩。眼
前に目指す赤坂山が迫ってきた感じがする。右手の大きな送電鉄塔のあたりのよう
だ。付近の紅葉は、時期を過ぎて枯葉まじりになっているとはいえ、なかなか見応
えがある。

 小さな沢を渡り、ジグザクの登りをこなすと、笹の広がる粟柄越(アワガラゴエ)へ出
てくる、急に視界が開けたように周りが明るくなる。峠から山頂までは緩やかで、
気持ちの良い笹原の中の道だ。

 赤坂山の山頂は期待通りの360度の展望。付近に樹木が無く、すっきりと周り
が見渡せる。ただ、やや雲が出ていて遠くの山は霞んでいる。次の目的地の三国山
が近くによく見える。登って来た方向を見下ろすと、先程休憩した「ブナの木平」
が意外にすぐ近くだ。登山口で別れた男性が上がって来ているか・・・と思ったが、
未だ、頂上には誰もいない。昼食にしていると、行く手の「明王ノ禿」の方向から、
かなりの人がこちらに向かってくる。意外に人気の山のようだ。10人くらいが到
着した所で、頂上も混雑してきたので、こちらは、先に進むことにする。鞍部への
下り道、続々と上がってくる登山者とすれ違う。一つの団体ではないようだ。小さ
な男の子から声を掛けられる。
 「コンニチワ!」
 「こんにちわ〜」
 「オンセン、イッタ?」
 「????・・・まだだよ・・・????」

 急な坂を下り、少し階段道を登ると小ピーク「明王ノ禿」に到着。東側の崖っぷ
ちにはロープが張ってある。振返って見る赤坂山は、すっきりとした三角錐のピー
クになっていて、なかなか格好がいい。

 ここからは尾根伝いではなく、一旦少し下り、小さな沢を越して黒河林道への水
平道を進む。東の方、琵琶湖を挟んで対岸には金糞岳、その右手は伊吹山だろうか。
白山は・・・と見ると、残念ながらそちらの方向には雲が掛かっている。三国山へ
は途中の分岐から、ピストンすることになる。分岐を左に曲がり、頂上直下の階段
道で一汗かいて、ようやく山頂に到着。

 潅木の茂みを通して、微かに周囲の山を望むことが出来るが、赤坂山のようにす
っきりとした展望ではない。茂みの奥でガサガサッと音がするので、動物かと思い、
注意して見ると、老人が一人、少し下りたところで休憩中であった。

 二度目の昼食を取った後、分岐まで戻り、黒河林道を目指す。すぐに小さな沢を
渡り、湿地帯の道を行く。途中には木道もあったりして、一寸した湿原の雰囲気だ。
ジグザグの下りを過ぎて、一旦林道に飛び出す。林道を少し下った処から、道標に
従って、再び右手の山道に入る。更に、少し下ると再度林道に出る。ここに登山口
案内板があり、数台の車がとまっている。コース案内は「赤坂山への登山口」とな
っている。三国山に行く人は少ないのかも知れない。「明王ノ禿」あたりで出会っ
た人達の多くは、ここからのピストンと思われる。

 ここからは林道の長い下りで、味気ないかと思ったが、半分位は未舗装だったの
で、割と気持ち良く歩く。バスの時刻までは、まだまだ時間がある。在原からの自
動車道と合流する少し手前の堰堤の縁でシートを広げて休憩。

 自動車道に出て右に下っていく。右手に、今日訪れた赤坂山・明王ノ禿あたりが
見えてくる。対岸にペンション風の建物が多くなってくると、白谷の集落だ。案内
板の前で、温泉を探して立止まって見ていると、通りかかった老人が指で教えてく
れる。行ったところは「マキノ老人憩の家」で、350円を出して温泉に入る。汗
を流してさっぱりする。ハイカーやサイクリングの客で賑わっている。そうそう、
途中で会った「オンセン、イッタ?」の男の子もやってきていた。

 風呂上りに冷たいものを飲んだりして時間を潰す。その後、もう少し下って、白
谷バス停に到着。それでも、バスの時刻まで一時間ほどある。喫茶店でもあればい
いのだが、そんなものはない。すぐ裏の児童公園で遊んだりして時間をつぶす。同
じくバスを待ちの老婆が一人。温泉へ入った帰りのようであったが、聞くと84才。
「歩くのが大好きで、去年までは比良山に登っていた」そうで、『アタック比良』
に何十回か参加して貰ったディバッグを誇らしげに見せてくれた。いろいろ話をし
たが、山歩きの効用か・・・とてもお元気であった。

 定刻を少し遅れてきたJRバスには、先客が4〜5人。その中には、朝方一緒だ
った単独男性もいた。要するに、帰るにはこのバスに乗るしかないのだ・・・(^_-)
途中のJRマキノ駅で下りても湖西線に乗ることはできたようだが、近江今津から
の方が電車の本数もも多いと思い、終点の今津まで乗る。

 一寸遠かったけど、温泉も付いている、なかなかの山行でした。

1995年 11月 12日(日曜日) 晴      (メンバー)芳子   
         8:30                  JR近江今津駅発                
         9:00          135.0m  北マキノ                    
         9:15          200.0m  赤坂山登山口                  
        10:15- 10:20       武奈ノ木平                   
        11:00          755.0m  粟柄越                     
        11:10- 11:35   823.8m  赤坂山                     
        11:45- 11:55           明王ノ禿                    
        12:25- 13:00   876.3m  三国山                      
        13:35      565.0m  林道出合                      
        15:00- 15:45   140.0m  マキノ老人憩の家                
        15:55- 16:56   140.0m  白谷バス停                   
        17:40- 14:45           JR近江今津駅                 
『低山徘徊派! (^^)v』及び『ML低徘』へのご意見、ご感想はあきゆき(akiyuki@teihai.com)までお願いします。(黒江彰之)
サイン